行方不明の相続人との遺産分割はどうしたら良いですか?
2023/9/13
相続財産については、遺言書が存在しない限り、相続人全員による遺産分割協議を行わなければ相続財産を分割することができません。この時、相続人の内の一人が行方不明である場合は、その者と協議をすることが出来ず、遺産分割を行えないままとなってしまいます。
ここで行方不明者が、行方不明となって7年間に亘り生死が不明である場合か、震災などの死亡の原因となる危機に遭遇して1年間に亘り生死が不明である場合であれば、失踪宣告の申立てが可能です。
失踪宣告の申立てが認められれば、失踪宣告を受けた者は死亡したものとみなされる為、残りの相続人による遺産分割が可能となります。
ですが、どこかで生きていることは確認出来ている場合は、このような失踪宣告の制度を利用することは出来ません。
どこかで生きてはいるが行方不明となった者がいる場合は、その行方不明者の財産を管理する不在者財産管理人を選任し、不在者財産管理人との間で、遺産分割協議を行う方法が考えられます。
不在者財産管理人を選任は家庭裁判所への申立てが必要ですので、裁判所で方法を確認するか、弁護士等の法律家にご相談ください。
相続土地国庫帰属制度とはどんな制度ですか。
今回は前回紹介した相続土地国庫帰属制度について説明します。
相続土地国庫帰属制度とは、令和5年4月27日に始まった制度であり、相続や遺贈により土地の所有権を取得した人が、土地を手放して国に所有権を渡すことができる制度です。
このような制度ができた背景には、不要な土地を手放したいと考える人が増えていることや、適正な管理がなされない土地が増え、所有者不明土地が発生していること等があります。
この制度を利用したい人は、法務局に、申請書を提出し、国庫帰属可能な土地かどうかの審査を受け、一定の負担金を支払うことで、相続や遺贈で手に入れた土地を国に渡すことが出来ます。法務局では、申請前に、国庫帰属が可能な土地かどうかや、必要書類等について事前相談ができます。
このような申請の窓口がある法務局は、都道府県毎に存在する法務局の本局であり、岐阜県内は、岐阜市の岐阜地方法務局が窓口です。
この制度は始まったばかりの為、今後制度の見直しもありうるところではありますが、お手元に負担金を支払っても手放したい土地がある場合は、この制度を利用することも検討してはどうでしょうか。
不要な不動産を処分したいです。
近時の相談の中に、相続した山や畑について、「管理が出来ないので処分する方法はありませんか。」との質問があります。
山や畑といった不動産は、有効活用すれば財産ですが、相続した子が、親の住む地域と違う地域で生活している場合、親の不動産を管理することが重い負担となってしまうことがあります。
特に木を伐採して売ったり、野菜を育てたりする人は少なくなっている為、山や畑を管理したくないと考えることもやむを得ない面もあります。
不動産を処分したいと考える場合、最初に考えるべきは他人に譲渡する方法です。その方法としては、不動産業者に依頼することや、自分で対象の土地の周辺に住む人に譲渡を提案することが考えられますが、不動産をもらってくれる人を見つけることは簡単ではありません。また、人によっては、市町村への寄付を考える人もいますが、市町村が不要な土地の寄付を受けることも簡単ではありません。
このように不動産の処分は難しいのですが、処分を希望する人が増えた状況を踏まえ、この令和5年4月27日から相続土地国庫帰属制度が開始されています。この制度については次回紹介します。
10年以上前の借金が突然請求されました。
時折見かける相談の中に、「若い頃に借りたお金で10年以上払っていなかったけど、ある日、○○債権回収株式会社と名乗る会社からお金を請求されました。」というものがあります。
貸金の返還を求める権利は、長らく請求せず放置した場合は、消滅時効の制度により請求する権利が失われます。近時の民法改正により、原則5年で時効により権利が消滅しますが、以前の民法でも10年で時効による消滅が認められました。
但し、この消滅時効が認められるためには、消滅を求める側からの時効の援用(時効を自分の利益のために主張すること)が必要であり、援用がなされるまで貸金の返還を請求することは認められます。
その為、貸金業者によっては、10年以上前から請求を諦めていたと思われる貸金の返還を、債権回収会社に依頼するなどして請求するケースがあり、消滅時効を主張することを知らないと、元金よりも大きくなった利息までも払わされることになりかねません。
身に覚えがあるけど昔から払っていない借金が、突然請求されてきた場合は、あわてて支払うことなく、消滅時効が認められないかを弁護士等にご相談下さい。
養育費が払えなくなりました。
2023/5/14
前回、養育費の支払期間について紹介しましたが、養育費の支払期間は10年以上となることもある為、離婚当時に決めた養育費が、その後の収入の変化などによって、支払えなくなるケースも存在します。
通常の借金であれば、その支払うべき金額が大きくなった場合には、破産手続を利用すれば、仮に数百万円の借金であっても、支払いを法的に免れることは可能です。
しかし、養育費については、子の生活を確保するために必要不可欠な性質の費用であることから、破産手続によって支払いを免れることは出来ません。
特に、調停や裁判で養育費の支払が決められている場合は、毎月の支払額が数万円でも、何年も支払いを怠ると大きな金額になり、ある日、預金を差し押さえられてしまうことにもなりかねません。
離婚後何らかの事情により仕事が出来なくなった場合など、収入状況に大きな変化があった場合は、家庭裁判所に申立てを行うことで、調停等で決められた養育費の額を変更することは可能です。
その為、大きな収入状況の変化があり支払いが困難となった場合は、単に支払いを止めるのではなく、適切な対応をすることが重要です。
養育費は何歳まで払うものですか。
前回、婚姻費用と養育費の違いについて説明しました。この中の養育費については、何歳までいくらくらいを支払うべきかで争いになる場合があります。
養育費を支払う期間や金額については、先ずは、当事者双方が話し合って決めることになりますが、話し合いで解決できない場合は、当事者が、家庭裁判所に申し立てることで、家庭裁判所が決めることになります。
支払う期間の争いの例としては、現在の法律の成人年齢である18歳までなのか、以前の成人年齢である20歳までなのか、はたまた大学を卒業するの時までなのかで争うことがあります。
このような期間を考えるに当たっては、養育費が、両親間で分担する未成熟子の生活費のことであるということがポイントです。
つまり、単に18歳や20歳といった年齢だけで決まるものではなく、離婚した両親の経済状況や子が経済的に自立しない理由等を加味して、子が未成熟子ではなくなった時までを期間とします。
その為、かつては18歳までを支払う期間として認めたこともあれば、今では大学卒業までを認める裁判例もあり、それぞれの事情に応じて決められることになります。
婚姻費用と養育費は違いますか。
夫婦間の不和により離婚に至る事例は多く、厚生労働省の「令和4年度 離婚に関する統計の概況」によれば、結婚した3組に1組が離婚しているという分析が発表されています。
離婚の際によく聞く言葉に、「養育費」という言葉がありますが、この養育費とは別の言葉として「婚姻費用」という言葉があります。時折、両者の言葉の意味が曖昧なまま離婚の協議をしていると思われる事案があります。
「養育費」とは、両親間で分担する未成熟子の生活費のことであり、子どもが経済的に自立するまでに親が負担すべき費用です。
「婚姻費用」とは、夫婦間で分担する家族の生活費のことであり、婚姻期間中に発生する家族全体の生活費として負担すべき費用です。この中には養育費で考慮される子どもの生活費も含まれますが、子どもがいなくても夫婦の生活費の問題として、収入の少ない者から、多い者に対して婚姻費用を求めることが出来ます。
婚姻費用と養育費は、計算方法や金額が違う為、婚姻費用の相場をインターネットで検索し、間違って養育費で計算したり、養育費を婚姻費用で計算してしまうこともあるので、言葉には注意が必要です。
(続)親族がいない人が亡くなった場合、財産はどうなりますか。
前回、亡くなった人に相続人がいない場合には、相続財産管理人が、相続財産を管理し、最終的には財産を国に帰属させることをご紹介しました。
このように相続人がいない場合は、その財産は国が取得することになりますが、時には、親族関係はないものの、亡くなった人と一緒に暮らしていた人のように、亡くなった人との間に特別な縁がある人(法律上は「特別縁故者」といいます。)がいらっしゃる場合があります。
特別縁故者がいる場合には、特別縁故者に財産を渡すことが、亡くなった人の意思に合致することから、民法上、特別縁故者への財産の分与が認められています。
本来であれば、相続人ではない人に財産を渡す方法としては、遺言を活用する必要がありますが、この特別縁故者の財産分与を利用すれば、遺言がない場合でも、相続財産を必要とする特別縁故者に相続財産を引き継がせることが可能になります。
ただし、特別縁故者として財産分与が認められる為には、一定の条件があり、家庭裁判所の判断を受ける必要があることから、特別縁故者として財産分与を求めたい人は、弁護士等の法律家にご相談することをお勧めします。
親族がいない人が亡くなった場合、財産はどうなりますか。
2022/12/23
近年、一人で生活する人がそのままお亡くなりになる孤独死が社会問題として取りあげられることがあります。このような孤独死に関連して問題となるものに、その人が亡くなった後の財産問題があります。
人が亡くなった場合、その財産は子・親・兄弟姉妹の順で親族に受け継がれることが民法上の原則ですが、時に、子がおらず、親兄弟もいないケースがあり、このような場合は、相続人がいないこととなり、誰も亡くなった人の財産を管理しない状況になります。
このような状況になると、亡くなった人と生前契約していた人が、必要な代金を支払ってもらえなかったり、その人が持っている不動産を、誰かが利用したくても利用できないという問題が発生したりします。
そこで民法においては、相続人がいない場合に、その財産を管理する相続財産管理人という制度を用意しています。
この相続財産管理人は、相続人のいない相続財産を管理し、売却する等して財産を整理し、負債を支払い、最終的には財産を国に帰属させます。相続人がいない財産でお困りの際は、このような相続財産管理人の制度を利用できないか等を弁護士にご相談ください。
相続放棄はいつまでにすれば良いですか。
11月15日は、良い遺言の日(11・イイ/15・イゴンの語呂合わせから決められたそうです。)ということで、その日は、遺言相談会に参加された人もいるかと思います。
遺言は、財産を残す側としては、希望に添った相続をしてもらう為に是非とも必要です。しかし、一方で、受け取る側からは、様々な事情を考慮して、相続財産の受け取りを拒否したいと考えることがあります。
特定の財産を渡す内容の遺言については、受け取りを拒否するだけで大丈夫ですが、全ての相続財産を相続させる旨の包括遺贈の場合や、遺言がない通常の相続の場合は、家庭裁判所において相続放棄の手続を取らないと、借金も含めた相続財産が相続されます。
この相続放棄の手続は、自分の為に相続があったことを知ったときから3ヵ月以内に行う必要があります。3ヵ月では相続すべきかが判断できない場合は、家庭裁判所に申し立てて、期間を伸ばすことも可能です。
突然の不幸により、相続財産がどの程度か分からず、預金もあるけど場合によっては借金が多いかもしれない場合は、この期間を伸ばす手続を使って冷静に判断する時間を確保することも重要です。