養育費が払えなくなりました。

養育費が払えなくなりました。

2023/5/14

 前回、養育費の支払期間について紹介しましたが、養育費の支払期間は10年以上となることもある為、離婚当時に決めた養育費が、その後の収入の変化などによって、支払えなくなるケースも存在します。
 通常の借金であれば、その支払うべき金額が大きくなった場合には、破産手続を利用すれば、仮に数百万円の借金であっても、支払いを法的に免れることは可能です。
 しかし、養育費については、子の生活を確保するために必要不可欠な性質の費用であることから、破産手続によって支払いを免れることは出来ません。
 特に、調停や裁判で養育費の支払が決められている場合は、毎月の支払額が数万円でも、何年も支払いを怠ると大きな金額になり、ある日、預金を差し押さえられてしまうことにもなりかねません。
 離婚後何らかの事情により仕事が出来なくなった場合など、収入状況に大きな変化があった場合は、家庭裁判所に申立てを行うことで、調停等で決められた養育費の額を変更することは可能です。
 その為、大きな収入状況の変化があり支払いが困難となった場合は、単に支払いを止めるのではなく、適切な対応をすることが重要です。

養育費は何歳まで払うものですか。

 前回、婚姻費用と養育費の違いについて説明しました。この中の養育費については、何歳までいくらくらいを支払うべきかで争いになる場合があります。
 養育費を支払う期間や金額については、先ずは、当事者双方が話し合って決めることになりますが、話し合いで解決できない場合は、当事者が、家庭裁判所に申し立てることで、家庭裁判所が決めることになります。
 支払う期間の争いの例としては、現在の法律の成人年齢である18歳までなのか、以前の成人年齢である20歳までなのか、はたまた大学を卒業するの時までなのかで争うことがあります。
このような期間を考えるに当たっては、養育費が、両親間で分担する未成熟子の生活費のことであるということがポイントです。
 つまり、単に18歳や20歳といった年齢だけで決まるものではなく、離婚した両親の経済状況や子が経済的に自立しない理由等を加味して、子が未成熟子ではなくなった時までを期間とします。
 その為、かつては18歳までを支払う期間として認めたこともあれば、今では大学卒業までを認める裁判例もあり、それぞれの事情に応じて決められることになります。

婚姻費用と養育費は違いますか。

 夫婦間の不和により離婚に至る事例は多く、厚生労働省の「令和4年度 離婚に関する統計の概況」によれば、結婚した3組に1組が離婚しているという分析が発表されています。
 離婚の際によく聞く言葉に、「養育費」という言葉がありますが、この養育費とは別の言葉として「婚姻費用」という言葉があります。時折、両者の言葉の意味が曖昧なまま離婚の協議をしていると思われる事案があります。
 「養育費」とは、両親間で分担する未成熟子の生活費のことであり、子どもが経済的に自立するまでに親が負担すべき費用です。
 「婚姻費用」とは、夫婦間で分担する家族の生活費のことであり、婚姻期間中に発生する家族全体の生活費として負担すべき費用です。この中には養育費で考慮される子どもの生活費も含まれますが、子どもがいなくても夫婦の生活費の問題として、収入の少ない者から、多い者に対して婚姻費用を求めることが出来ます。
 婚姻費用と養育費は、計算方法や金額が違う為、婚姻費用の相場をインターネットで検索し、間違って養育費で計算したり、養育費を婚姻費用で計算してしまうこともあるので、言葉には注意が必要です。

(続)親族がいない人が亡くなった場合、財産はどうなりますか。

 前回、亡くなった人に相続人がいない場合には、相続財産管理人が、相続財産を管理し、最終的には財産を国に帰属させることをご紹介しました。
 このように相続人がいない場合は、その財産は国が取得することになりますが、時には、親族関係はないものの、亡くなった人と一緒に暮らしていた人のように、亡くなった人との間に特別な縁がある人(法律上は「特別縁故者」といいます。)がいらっしゃる場合があります。
 特別縁故者がいる場合には、特別縁故者に財産を渡すことが、亡くなった人の意思に合致することから、民法上、特別縁故者への財産の分与が認められています。
 本来であれば、相続人ではない人に財産を渡す方法としては、遺言を活用する必要がありますが、この特別縁故者の財産分与を利用すれば、遺言がない場合でも、相続財産を必要とする特別縁故者に相続財産を引き継がせることが可能になります。
 ただし、特別縁故者として財産分与が認められる為には、一定の条件があり、家庭裁判所の判断を受ける必要があることから、特別縁故者として財産分与を求めたい人は、弁護士等の法律家にご相談することをお勧めします。

親族がいない人が亡くなった場合、財産はどうなりますか。

2022/12/23

 近年、一人で生活する人がそのままお亡くなりになる孤独死が社会問題として取りあげられることがあります。このような孤独死に関連して問題となるものに、その人が亡くなった後の財産問題があります。
 人が亡くなった場合、その財産は子・親・兄弟姉妹の順で親族に受け継がれることが民法上の原則ですが、時に、子がおらず、親兄弟もいないケースがあり、このような場合は、相続人がいないこととなり、誰も亡くなった人の財産を管理しない状況になります。
このような状況になると、亡くなった人と生前契約していた人が、必要な代金を支払ってもらえなかったり、その人が持っている不動産を、誰かが利用したくても利用できないという問題が発生したりします。
 そこで民法においては、相続人がいない場合に、その財産を管理する相続財産管理人という制度を用意しています。
 この相続財産管理人は、相続人のいない相続財産を管理し、売却する等して財産を整理し、負債を支払い、最終的には財産を国に帰属させます。相続人がいない財産でお困りの際は、このような相続財産管理人の制度を利用できないか等を弁護士にご相談ください。

相続放棄はいつまでにすれば良いですか。

 11月15日は、良い遺言の日(11・イイ/15・イゴンの語呂合わせから決められたそうです。)ということで、その日は、遺言相談会に参加された人もいるかと思います。
 遺言は、財産を残す側としては、希望に添った相続をしてもらう為に是非とも必要です。しかし、一方で、受け取る側からは、様々な事情を考慮して、相続財産の受け取りを拒否したいと考えることがあります。
 特定の財産を渡す内容の遺言については、受け取りを拒否するだけで大丈夫ですが、全ての相続財産を相続させる旨の包括遺贈の場合や、遺言がない通常の相続の場合は、家庭裁判所において相続放棄の手続を取らないと、借金も含めた相続財産が相続されます。
 この相続放棄の手続は、自分の為に相続があったことを知ったときから3ヵ月以内に行う必要があります。3ヵ月では相続すべきかが判断できない場合は、家庭裁判所に申し立てて、期間を伸ばすことも可能です。
 突然の不幸により、相続財産がどの程度か分からず、預金もあるけど場合によっては借金が多いかもしれない場合は、この期間を伸ばす手続を使って冷静に判断する時間を確保することも重要です。

自転車の為に新しい保険加入が必要ですか。

 前回のコラムで、令和4年10月1日から自転車の運転に関し保険加入が義務化されたことを紹介しました。このような情報を見ると、新しい保険に加入しなければならないと思われる人も多いかもしれません。
 しかし、実は自転車の損害賠償責任保険に新たに加入しなくても、既に加入している自動車保険、火災保険、傷害保険の中に、特約として「日常生活賠償特約」や「個人賠償責任補償特約」が付いていれば、自転車事故も日常生活上の事故として補償されていることがあります。
 この場合は、従来加入していた保険によって自転車事故の損害賠償責任保険への加入が出来ていることになりますので、新たに保険に加入する必要がありません。
 ただし、ここで注意しなければならないのは、このような特約は、契約している保険の内容によって異なるということです。特約については、正確に把握しないまま加入している人もいる為、内容の確認が重要です。
 特約の対象となる人が契約者以外の家族等も含まれるのか、どのくらいの金額まで補償されるのか、業務上で使用する場合も補償するのか等、具体的な場面を前提に保険内容をご確認下さい。

自転車の運転に保険加入は必要ですか。

2022/10/15

 自動車の運転をする人は、自動車賠償責任保険法に基づき、自賠責保険への加入が義務づけられています。
 これは自動車による事故が、人の生命身体に対する重大な損害を与える為、保険制度により最低限の損害賠償を保障しようとした結果です。
 この自賠責保険は、自動車を対象としており、運転手が自分の足で運転する自転車は含まれておらず、自転車はこれまで保険加入は義務づけられておりませんでした。
 しかし、いくら人力で運転する自転車であっても、そのスピードやぶつかった相手によっては、自転車の運転手だけでなく、その相手方に大きな損害を与えることがあります。
 実際の事例でも、小学生の運転する自転車が、高齢の女性とぶつかり、9500万円の損害賠償が認められた事例が存在します。
 このような時に、保険に加入していれば、保険会社が損害賠償を代わりに行ってくれますが、自転車については保険に加入していないケースもあり注意が必要です。
 その為、近年、各地方自治体の条例で、自転車の賠償責任保険への加入を義務づけ始めており、岐阜県でもこの令和4年10月1日より、保険加入が義務づけられています。

賃貸借の保証人はどれだけの責任を負いますか。

 アパートの賃貸借契約においては、賃料が未払になった時に備えて、大家さんが保証人を求めることが一般的です。
 賃貸借契約における保証人は、賃貸物件の借主が負う賃料支払債務等について、借主が返済できない時に、代わりに支払いを行う立場の者であり、借主が自分で退居できなかったときの退居費用等についても責任を負います。
 その為、賃貸借契約の保証人は、賃貸借契約締結時は、いくらの債務を保証するか明確でなく、場合によって1年分以上の賃料を保証することにもなりかねません。
 このように一定の継続的な契約関係から生じる将来的な債務も保証する契約を、根保証契約と呼び、かつては一旦契約すると全ての債務を保証することが想定されていました。
 しかし、近時の民法改正により2020年4月1日以降の個人が保証人となる根保証契約については、契約当初に保証する限度額を契約書に明記しないと、保証債務が発生しないことになりました。
 その為、賃貸借契約の保証人になる際には、契約書に明記されている限度額を確認することが重要であり、大家さんとしては、適切な極度額を定めておくことが必要となります。

無料と聞いていたのに代金を請求されて困ってます。

 近年、無料と信じて契約申込みをしたのに、いつの間にか有料になり代金を請求されて困ったという事例があります。
 このような事例は、特に、定期料金を支払うことにより、一定期間サービスを利用できるというサブスクリプションサービスを利用した際に生じやすいトラブルかと思います。
 このようなトラブルは、契約申込の際の説明に、有料になることが明確に説明してあるにも関わらず、契約内容を確認しないまま契約したというケースも中にはあります。
 しかし、時には、そのような契約内容を確認しない消費者の心理に付け込み、当初のサービスの紹介では、全て無料のような宣伝文句を並べ、契約内容には、一定期間経過後有料になることが分かりづらく記載されているような事例もあります。
 このような事例の場合、契約の経緯や内容にもよりますが、特定商取引法、消費者契約法、民法に定める詐欺、錯誤等の様々な理由による契約解除や、時には契約がそもそも成立していないという主張が可能な場合も考えられます。
 特に高額な代金が請求された場合は、悪質なケースである可能性がありますので、お近くの弁護士にご相談下さい。

尾藤法律事務所 岐阜県郡上市八幡町の地域に根づく法律事務所「尾藤法律事務所」です。