政治家は年賀状を出さないのですか。

政治家は年賀状を出さないのですか。

2023/12/31

 前回に続き選挙に関する法律知識を紹介したいと思います。今回は、最近は出す人も少なくなっていますが、年明けに届く年賀状に関する知識です。
 年賀状に関しては、公職選挙法では、衆議院議員、参議院議員、地方公共団体の議会の議員及び長の職にある者やその候補者や候補者となろうとする者(以下「政治家」といいます。)は、選挙区内にある者に対して、年賀状を出してはならないという規制があります(147条の2)。
 この規制は、年賀状に限らず、寒中見舞状、暑中見舞状等のあいさつ状全般が禁止されており、禁止される期間も、選挙期間等の一定の時期に限ることもなく年間を通して禁止されております。その為、政治家が、自ら選挙区内の人に対して、年賀状等を始め、何らかのあいさつ状を送るようなことはありません。
 なお、政治家は、自らあいさつ状を送ることは出来ませんが、受け取った年賀状等のあいさつ状に対して、手書きによる答礼を送ることはできます。
 このように政治家の行動には、一般の人とは異なる制約があり、年賀状を出さないことにも理由があることから、周囲においても理解しておくことも重要です。

「一票の格差」ってなんですか。

 郡上市では、令和6年4月頃に市長や市議会議員の選挙の実施が予想されます。選挙というと、大切とは分かっていても、難しいと思われる人も多いかもしれません。そこで、選挙に関する法律知識を御紹介したいと思います。
 選挙に関するニュースの中で、「一票の格差」に関するものがあります。「一票の格差」とは、衆議院議員選挙のような全国区の選挙でよく問題となりますが、これは例えば人口1万人のA地域と、人口2万人のB地域があり、各地域から1人しか議員が選ばれないような場合に生じる問題です。
一見すると、各地域から議員が選ばれている為、問題ないと思うかもしれません。
 ですが、仮にA地域の人が、議員を選びたい時には、5千人以上の仲間を集めれば、選んだ人が当選しますが、B地域に住む人は、8千人の仲間を集めても、1万人以上の仲間を集めたグループの議員が選ばれてしまいます。
 これはB地域の人の一票の重み(投票の価値)が、A地域の人よりも軽い事を意味しており、これを「一票の格差」と言います。投票の価値の平等は、最高裁判所でも重要とされ、一票の格差を理由に、選挙の有効性が争われています。

1年以上前に亡くなった父の借金が出てきました。

 亡くなった人の財産は、その子が相続人となりますが、子は親の相続財産を相続するかを選ぶことが出来ます。
 民法上、相続が開始したことを知った時から3ヶ月以内に、相続を承認するか、放棄するかを選ぶ必要があり、3ヶ月以内に相続放棄をしないと、承認したとみなされます。
 また、相続財産には、借金のようなマイナスの財産も含まれることから、相続が開始してからの3ヶ月間は、相続の承認か放棄かを判断する重要な期間になります。
 これは親が亡くなった時点で、親の借金を知っていれば判断が容易ですが、時に、親が亡くなってから何年も経ってから借金が判明する場合があります。
 このような場合、親の死を知ってから3ヶ月を経過していることから一見放棄が認められないかとも思われます。しかし、判例上、親の死から数年経過していても、亡くなった当初に借金を知らなかった場合は、借金を認識してから3ヶ月以内に手続を行えば、相続放棄が認められる場合が存在します。
 その為、親が亡くなって何年も経過して突然多額の借金を請求されても、直ぐに諦めることなく、相続放棄が可能かどうかを弁護士にご相談ください。

認知症の家族との遺産分割はどうしたら良いですか?

 相続財産については、遺言書が存在しない限り、相続人全員による遺産分割協議を行わなければ相続財産を分割することができません。この時、相続人の内の一人が認知症で、全く意思疎通ができない場合は、その者と協議をすることが出来ず、遺産分割を行えないままとなってしまいます。
 このような場合、成年後見制度を利用することで遺産分割を行うことができ、成年後見制度を利用するためには、家庭裁判所に申立てを行うことが必要です。
 ちなみに、成年後見制度は、認知症などにより意思疎通が出来なくなった人を保護する制度であり、遺産分割に限らず、身の回りの契約等の必要な手続の為にも制度を活用することが重要です。
 また、成年後見人は、判断能力を失った人の財産を守るのが仕事であり、遺産分割を行いたいという他の相続人の為に活動することが求められるわけではありません。
その為、遺産分割の為に成年後見制度を利用する場合、弁護士等の専門職の後見人が選任されやすく、成年後見人は、他の相続人の意向のみに従って遺産分割するものではない事は、成年後見制度を利用するにあたって理解しておくことが重要です。

行方不明の相続人との遺産分割はどうしたら良いですか?

2023/9/13

 相続財産については、遺言書が存在しない限り、相続人全員による遺産分割協議を行わなければ相続財産を分割することができません。この時、相続人の内の一人が行方不明である場合は、その者と協議をすることが出来ず、遺産分割を行えないままとなってしまいます。
 ここで行方不明者が、行方不明となって7年間に亘り生死が不明である場合か、震災などの死亡の原因となる危機に遭遇して1年間に亘り生死が不明である場合であれば、失踪宣告の申立てが可能です。
失踪宣告の申立てが認められれば、失踪宣告を受けた者は死亡したものとみなされる為、残りの相続人による遺産分割が可能となります。
 ですが、どこかで生きていることは確認出来ている場合は、このような失踪宣告の制度を利用することは出来ません。
 どこかで生きてはいるが行方不明となった者がいる場合は、その行方不明者の財産を管理する不在者財産管理人を選任し、不在者財産管理人との間で、遺産分割協議を行う方法が考えられます。
 不在者財産管理人を選任は家庭裁判所への申立てが必要ですので、裁判所で方法を確認するか、弁護士等の法律家にご相談ください。

相続土地国庫帰属制度とはどんな制度ですか。

 今回は前回紹介した相続土地国庫帰属制度について説明します。
 相続土地国庫帰属制度とは、令和5年4月27日に始まった制度であり、相続や遺贈により土地の所有権を取得した人が、土地を手放して国に所有権を渡すことができる制度です。
 このような制度ができた背景には、不要な土地を手放したいと考える人が増えていることや、適正な管理がなされない土地が増え、所有者不明土地が発生していること等があります。
 この制度を利用したい人は、法務局に、申請書を提出し、国庫帰属可能な土地かどうかの審査を受け、一定の負担金を支払うことで、相続や遺贈で手に入れた土地を国に渡すことが出来ます。法務局では、申請前に、国庫帰属が可能な土地かどうかや、必要書類等について事前相談ができます。
 このような申請の窓口がある法務局は、都道府県毎に存在する法務局の本局であり、岐阜県内は、岐阜市の岐阜地方法務局が窓口です。
 この制度は始まったばかりの為、今後制度の見直しもありうるところではありますが、お手元に負担金を支払っても手放したい土地がある場合は、この制度を利用することも検討してはどうでしょうか。

不要な不動産を処分したいです。

 近時の相談の中に、相続した山や畑について、「管理が出来ないので処分する方法はありませんか。」との質問があります。
 山や畑といった不動産は、有効活用すれば財産ですが、相続した子が、親の住む地域と違う地域で生活している場合、親の不動産を管理することが重い負担となってしまうことがあります。
特に木を伐採して売ったり、野菜を育てたりする人は少なくなっている為、山や畑を管理したくないと考えることもやむを得ない面もあります。
 不動産を処分したいと考える場合、最初に考えるべきは他人に譲渡する方法です。その方法としては、不動産業者に依頼することや、自分で対象の土地の周辺に住む人に譲渡を提案することが考えられますが、不動産をもらってくれる人を見つけることは簡単ではありません。また、人によっては、市町村への寄付を考える人もいますが、市町村が不要な土地の寄付を受けることも簡単ではありません。
 このように不動産の処分は難しいのですが、処分を希望する人が増えた状況を踏まえ、この令和5年4月27日から相続土地国庫帰属制度が開始されています。この制度については次回紹介します。

10年以上前の借金が突然請求されました。

 時折見かける相談の中に、「若い頃に借りたお金で10年以上払っていなかったけど、ある日、○○債権回収株式会社と名乗る会社からお金を請求されました。」というものがあります。
 貸金の返還を求める権利は、長らく請求せず放置した場合は、消滅時効の制度により請求する権利が失われます。近時の民法改正により、原則5年で時効により権利が消滅しますが、以前の民法でも10年で時効による消滅が認められました。
 但し、この消滅時効が認められるためには、消滅を求める側からの時効の援用(時効を自分の利益のために主張すること)が必要であり、援用がなされるまで貸金の返還を請求することは認められます。
 その為、貸金業者によっては、10年以上前から請求を諦めていたと思われる貸金の返還を、債権回収会社に依頼するなどして請求するケースがあり、消滅時効を主張することを知らないと、元金よりも大きくなった利息までも払わされることになりかねません。
 身に覚えがあるけど昔から払っていない借金が、突然請求されてきた場合は、あわてて支払うことなく、消滅時効が認められないかを弁護士等にご相談下さい。

養育費が払えなくなりました。

2023/5/14

 前回、養育費の支払期間について紹介しましたが、養育費の支払期間は10年以上となることもある為、離婚当時に決めた養育費が、その後の収入の変化などによって、支払えなくなるケースも存在します。
 通常の借金であれば、その支払うべき金額が大きくなった場合には、破産手続を利用すれば、仮に数百万円の借金であっても、支払いを法的に免れることは可能です。
 しかし、養育費については、子の生活を確保するために必要不可欠な性質の費用であることから、破産手続によって支払いを免れることは出来ません。
 特に、調停や裁判で養育費の支払が決められている場合は、毎月の支払額が数万円でも、何年も支払いを怠ると大きな金額になり、ある日、預金を差し押さえられてしまうことにもなりかねません。
 離婚後何らかの事情により仕事が出来なくなった場合など、収入状況に大きな変化があった場合は、家庭裁判所に申立てを行うことで、調停等で決められた養育費の額を変更することは可能です。
 その為、大きな収入状況の変化があり支払いが困難となった場合は、単に支払いを止めるのではなく、適切な対応をすることが重要です。

養育費は何歳まで払うものですか。

 前回、婚姻費用と養育費の違いについて説明しました。この中の養育費については、何歳までいくらくらいを支払うべきかで争いになる場合があります。
 養育費を支払う期間や金額については、先ずは、当事者双方が話し合って決めることになりますが、話し合いで解決できない場合は、当事者が、家庭裁判所に申し立てることで、家庭裁判所が決めることになります。
 支払う期間の争いの例としては、現在の法律の成人年齢である18歳までなのか、以前の成人年齢である20歳までなのか、はたまた大学を卒業するの時までなのかで争うことがあります。
このような期間を考えるに当たっては、養育費が、両親間で分担する未成熟子の生活費のことであるということがポイントです。
 つまり、単に18歳や20歳といった年齢だけで決まるものではなく、離婚した両親の経済状況や子が経済的に自立しない理由等を加味して、子が未成熟子ではなくなった時までを期間とします。
 その為、かつては18歳までを支払う期間として認めたこともあれば、今では大学卒業までを認める裁判例もあり、それぞれの事情に応じて決められることになります。

尾藤法律事務所 岐阜県郡上市八幡町の地域に根づく法律事務所「尾藤法律事務所」です。