相続登記の義務化とはなんですか。
2024/9/1
近年の法律改正で、令和6年4月1日から、相続の際の登記が義務化されました。
そもそも登記とは、不動産等の権利を確実にするために公式の帳簿(登記簿)に記載することであり、不動産を購入したときには、登記をしないと自身が所有者であることを他の人に主張することが出来なくなります。
その為、不動産の権利を取得した人は、自身の権利を守るために積極的に登記をするところであり、親等が亡くなった際の相続登記も、相続した権利を守るために、通常は自ら登記を行うものです。
しかし、遺産は相続しても、不動産としての価値が乏しかったり、相続人同士で話し合いができなかったり等の理由で、登記を行わない場合も多く、以前は大昔の人の名義の登記を放置しても問題とはされませんでした。
ところが、放置等の結果、所有者不明土地が増加したこともあり、法律を改正し、不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に、相続登記をすることが法律上の義務となりました。これは令和6年4月1日以降の相続だけでなく、それ以前の相続も対象ですので、これまで相続登記をしていない場合は、速やかな対応が必要です。
知人の立候補者への投票をお願いするのはダメですか。
前回に続き選挙に関する法律知識を紹介したいと思います。
選挙の投票日が近づくにつれて、選挙に立候補する人だけでなく、その周りで応援する人もまた、当選を目指して周囲に様々な呼びかけを行いたくなるかと思います。
ここで気を付けなければならないのが、特定の候補者への投票依頼といった選挙運動は、公職選挙法で、選挙運動期間以外は行ってはならないと定められていることです。しかも、選挙運動期間は、告示日に立候補の届出が受理された時から、投票日の前日の24時までと限られた期間のため、応援しようとするがあまりに、選挙運動期間前に投票依頼をしてしまうと、事前運動として処罰の対象となります。
選挙運動は、判例などにより「特定の選挙について、特定の候補者の当選を目的として、投票を得又は得させるために直接又は間接に必要かつ有利な行為」とされますが、後援会活動など、選挙運動には当たらない政治活動も存在します。
その為、投票依頼などの明確な選挙運動は、選挙運動期間を意識して行い、選挙に関わる人は自身の行為が許される政治活動かどうかを注意することが必要です。
議員の立候補者が少ないとどうなりますか。
前回に続き選挙に関する法律知識を紹介したいと思います。
市町村議会の議員の数は、条例で定めることとなっており(地方自治法第91条1項)、各市町村によって議員の数は異なります。郡上市においては、郡上市議会議員定数条例によって、18人とされており、その人数を超える立候補者がいれば、選挙によって18人の議員が選ばれることとなります。
この立候補者については、前回御紹介したように一定の条件を満たせば、誰でも立候補することが出来ます。
しかし、最近は人口減少の影響もあってか、立候補をする人が少なくなっており、中には、立候補者数が定数に達しないまま定数割れとなる自治体も存在します。
立候補者数が、定められた数よりも少ない場合は、選挙とはならず立候補者全員がそのまま議員に選ばれます。
選挙が行われないことで争いなく議員が選ばれる面がありますが、選挙の機能には、複数の候補者間で競争が行われ、選挙権を持つ有権者が、選挙を通じて自分の意思を政治に反映させる事が挙げられます。その為、このような機能が果たされる意味で、選挙が行われることの方が望ましい姿であると評価できます。
議員でないと市長にはなれませんか。
前回に続き選挙に関する法律知識を紹介したいと思います。市政に関する選挙と言えば市議会議員選挙と市長選挙があります。
日本の行政の長である内閣総理大臣については、国会議員の中から選ばれることが憲法に書かれており(67条1項)、国会議員でなければ、内閣総理大臣にはなれません。
では市の行政の長である市長は、市議会議員から選ばれなければならないかというと、そうではありません。市長も市議会議員も住民が直接選ぶことが憲法に書かれています(93条2項)。
つまり、市長は、それまで市議会議員の仕事をしていなくても、一定の条件が満たされれば誰もが立候補することが出来ます。
立候補の条件としては、市長も市議会議員も「日本国民で満25歳以上であること」が条件であり、市議会議員の場合は、「引き続き3ヶ月以上その市区町村に住所のある者」という条件が更に必要です。
その他、立候補には、一定額の供託金が必要で、選挙に関する犯罪により被選挙権が停止されている等の事由があると立候補が出来ません。
これらの条件に問題がなければ、誰でも市長に立候補でき、住民に選ばれたら市長になれます。
政治家は年賀状を出さないのですか。
2023/12/31
前回に続き選挙に関する法律知識を紹介したいと思います。今回は、最近は出す人も少なくなっていますが、年明けに届く年賀状に関する知識です。
年賀状に関しては、公職選挙法では、衆議院議員、参議院議員、地方公共団体の議会の議員及び長の職にある者やその候補者や候補者となろうとする者(以下「政治家」といいます。)は、選挙区内にある者に対して、年賀状を出してはならないという規制があります(147条の2)。
この規制は、年賀状に限らず、寒中見舞状、暑中見舞状等のあいさつ状全般が禁止されており、禁止される期間も、選挙期間等の一定の時期に限ることもなく年間を通して禁止されております。その為、政治家が、自ら選挙区内の人に対して、年賀状等を始め、何らかのあいさつ状を送るようなことはありません。
なお、政治家は、自らあいさつ状を送ることは出来ませんが、受け取った年賀状等のあいさつ状に対して、手書きによる答礼を送ることはできます。
このように政治家の行動には、一般の人とは異なる制約があり、年賀状を出さないことにも理由があることから、周囲においても理解しておくことも重要です。
「一票の格差」ってなんですか。
郡上市では、令和6年4月頃に市長や市議会議員の選挙の実施が予想されます。選挙というと、大切とは分かっていても、難しいと思われる人も多いかもしれません。そこで、選挙に関する法律知識を御紹介したいと思います。
選挙に関するニュースの中で、「一票の格差」に関するものがあります。「一票の格差」とは、衆議院議員選挙のような全国区の選挙でよく問題となりますが、これは例えば人口1万人のA地域と、人口2万人のB地域があり、各地域から1人しか議員が選ばれないような場合に生じる問題です。
一見すると、各地域から議員が選ばれている為、問題ないと思うかもしれません。
ですが、仮にA地域の人が、議員を選びたい時には、5千人以上の仲間を集めれば、選んだ人が当選しますが、B地域に住む人は、8千人の仲間を集めても、1万人以上の仲間を集めたグループの議員が選ばれてしまいます。
これはB地域の人の一票の重み(投票の価値)が、A地域の人よりも軽い事を意味しており、これを「一票の格差」と言います。投票の価値の平等は、最高裁判所でも重要とされ、一票の格差を理由に、選挙の有効性が争われています。
1年以上前に亡くなった父の借金が出てきました。
亡くなった人の財産は、その子が相続人となりますが、子は親の相続財産を相続するかを選ぶことが出来ます。
民法上、相続が開始したことを知った時から3ヶ月以内に、相続を承認するか、放棄するかを選ぶ必要があり、3ヶ月以内に相続放棄をしないと、承認したとみなされます。
また、相続財産には、借金のようなマイナスの財産も含まれることから、相続が開始してからの3ヶ月間は、相続の承認か放棄かを判断する重要な期間になります。
これは親が亡くなった時点で、親の借金を知っていれば判断が容易ですが、時に、親が亡くなってから何年も経ってから借金が判明する場合があります。
このような場合、親の死を知ってから3ヶ月を経過していることから一見放棄が認められないかとも思われます。しかし、判例上、親の死から数年経過していても、亡くなった当初に借金を知らなかった場合は、借金を認識してから3ヶ月以内に手続を行えば、相続放棄が認められる場合が存在します。
その為、親が亡くなって何年も経過して突然多額の借金を請求されても、直ぐに諦めることなく、相続放棄が可能かどうかを弁護士にご相談ください。
認知症の家族との遺産分割はどうしたら良いですか?
相続財産については、遺言書が存在しない限り、相続人全員による遺産分割協議を行わなければ相続財産を分割することができません。この時、相続人の内の一人が認知症で、全く意思疎通ができない場合は、その者と協議をすることが出来ず、遺産分割を行えないままとなってしまいます。
このような場合、成年後見制度を利用することで遺産分割を行うことができ、成年後見制度を利用するためには、家庭裁判所に申立てを行うことが必要です。
ちなみに、成年後見制度は、認知症などにより意思疎通が出来なくなった人を保護する制度であり、遺産分割に限らず、身の回りの契約等の必要な手続の為にも制度を活用することが重要です。
また、成年後見人は、判断能力を失った人の財産を守るのが仕事であり、遺産分割を行いたいという他の相続人の為に活動することが求められるわけではありません。
その為、遺産分割の為に成年後見制度を利用する場合、弁護士等の専門職の後見人が選任されやすく、成年後見人は、他の相続人の意向のみに従って遺産分割するものではない事は、成年後見制度を利用するにあたって理解しておくことが重要です。
行方不明の相続人との遺産分割はどうしたら良いですか?
2023/9/13
相続財産については、遺言書が存在しない限り、相続人全員による遺産分割協議を行わなければ相続財産を分割することができません。この時、相続人の内の一人が行方不明である場合は、その者と協議をすることが出来ず、遺産分割を行えないままとなってしまいます。
ここで行方不明者が、行方不明となって7年間に亘り生死が不明である場合か、震災などの死亡の原因となる危機に遭遇して1年間に亘り生死が不明である場合であれば、失踪宣告の申立てが可能です。
失踪宣告の申立てが認められれば、失踪宣告を受けた者は死亡したものとみなされる為、残りの相続人による遺産分割が可能となります。
ですが、どこかで生きていることは確認出来ている場合は、このような失踪宣告の制度を利用することは出来ません。
どこかで生きてはいるが行方不明となった者がいる場合は、その行方不明者の財産を管理する不在者財産管理人を選任し、不在者財産管理人との間で、遺産分割協議を行う方法が考えられます。
不在者財産管理人を選任は家庭裁判所への申立てが必要ですので、裁判所で方法を確認するか、弁護士等の法律家にご相談ください。
相続土地国庫帰属制度とはどんな制度ですか。
今回は前回紹介した相続土地国庫帰属制度について説明します。
相続土地国庫帰属制度とは、令和5年4月27日に始まった制度であり、相続や遺贈により土地の所有権を取得した人が、土地を手放して国に所有権を渡すことができる制度です。
このような制度ができた背景には、不要な土地を手放したいと考える人が増えていることや、適正な管理がなされない土地が増え、所有者不明土地が発生していること等があります。
この制度を利用したい人は、法務局に、申請書を提出し、国庫帰属可能な土地かどうかの審査を受け、一定の負担金を支払うことで、相続や遺贈で手に入れた土地を国に渡すことが出来ます。法務局では、申請前に、国庫帰属が可能な土地かどうかや、必要書類等について事前相談ができます。
このような申請の窓口がある法務局は、都道府県毎に存在する法務局の本局であり、岐阜県内は、岐阜市の岐阜地方法務局が窓口です。
この制度は始まったばかりの為、今後制度の見直しもありうるところではありますが、お手元に負担金を支払っても手放したい土地がある場合は、この制度を利用することも検討してはどうでしょうか。